• 滝沢克己賞決定と講評!

    2025.1.29

    当協会は2024年に『滝沢克己の現在』(新教出版社)を企画・出版しました。 それを受けて昨年来、同書を対象に滝沢克己賞の選定が行われてきました。このほど選定が終了しましたので、受賞者と作品名をここに公表します。

    下記のお二人の同時受賞となりました。五十音順に

     鈴木 一典氏 「私の所有を超えて」

     丹波 博紀氏 「わからなさへの定位」 

    お二人には本年6月21日(土)の総会で賞金が授与され、講演をいただきます。

    なお、 下に選考委員会の講評を掲載しましたので、お読みください。

    【 第一回滝沢克己賞選考に関する講評】  

     今回の滝沢克己賞の候補作品は、『滝沢克己の現在』に掲載された作品の中から、若手・中堅の作者によるものに絞って選出されました。賞設定の目的が、若手寄稿家への励ましに置かれているからです。該当する作品群から旧作の再掲載を除いた結果、六作品が対象として残り議論・審査されました。基準となるのは、『思想のひろば』の出発点における理念・方針です。すなわち、「広い読者層に開かれた著述を奨励し、併せて学術的著述との両立を図る」という方向性です。

     審議の結果、丹波博紀氏の「わからなさへの定位」と、鈴木一典氏の「私の所有を超えて」とが受賞作となりました。前者については、滝沢を解説するというより、これに迫る姿勢がこの論文に緊張感を与え魅力あるものにしていると評価されました。ここでの「わからなさ」は、滝沢・インマヌエルの「原点との関係と区別」の「区別」であることを示唆しています。後者については、滝沢思想の一つの柱ながら、これまで比較的に論じられることが少なかった社会的・経済的領域の問題が、堅実な筆致で論じられていることが評価されました。上記二作と並んで、「哲学との一つの真正な出会い方」が主な議論の対象となりましたが、評価が割れました。エックハルトやナンシーとの関連にも言及されていますが、これは今後滝沢を語る際の新たなテーマとなるでしょう。その他の候補作品も、いずれ劣らぬ佳作揃いだったことを書き添えて、審査の結果報告といたします。

                            選考委員会 文責 水田信

                【 選考委員 】   芝田 豊彦 関西大学名誉教授  

                        寺園 喜基 九州大学名誉教授  

                  (委員長)   水田  信  当協会前理事長、

                     一般社団法人滝沢克己記念館代表理事、

                             元福岡歯科大学教授

                              (以上、五十音順)