• 滝沢克己の人と人生

    2017.4.11

    1909年生まれ、1984年没。九州大学教授、ハイデルベルク大学名誉博士。専門は哲学、神学。

    西田幾多郎、カール・バルトの影響を受け、人間存在の根底に横たわる、神と人との「不可同・不可分・不可逆の原事実」を説く。

    これは禅仏教の覚醒の場所に、キリスト教の福音がまさにやってきていた、ということの表明そのものである。

    つまり、神と人とは「付かず・離れず・順序を逆にできず」、人がそれに気づこうと気づくまいと、ただ単に接触していた。

    これが人間存在の原点であり、このことの覚醒が、人間をまったく新しい生の生かしへと導く。

    人間存在を支えるこの単純な「原事実」に立って生き、かつ語ることを、滝沢は生涯貫いた。

    「原事実」とは単なる真理の表現に止まらず、滝沢の人間的魅力の源でもあった。

    滝沢の語りは極めて多岐にわたり、哲学、神学、仏教、近代文学、経済学、芸術論、日本論、物理学等に及んだ。

    晩年はそれらを体系的に見通す「純粋神人学」という独自の学問を構想。

    創造の泉から湧くその語りは尽きることなく、未完のことばは無限の展開の可能性をはらんでいる。